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救急に行くと何人かの人が長椅子で順番を待っていた。少し待つだろうな。パジャマの上にダウンコートを着たお父さんに言う。
「手続きは自分でできる?」
「ああ、救急にきたのは何十年ぶりだ。看護師さんに訊きながら手続きしてみるよ」
三十分くらい待って診察室へ呼ばれた。まだ三十代くらいに見える医師は検査をするために一晩だけでも入院をしたほうがいいと勧めてきた。
「入院ですか?」
目を丸くして訊き返すお父さん。思わぬ言葉だったのか。
「ええ、高熱もでているしそのほうがいいでしょう」
「月曜日は仕事もあるのですが……」
「このままじゃ行けませんよ。部屋の準備ができるまで点滴室で点滴していてください」
この病院は十階建てでこの辺りで一番大きい。院内にはコンビニもあるしレストランもある。壮太がお見舞いに来ても飽きないだろう。隼太は「入院しよう、お父さん」と言った。
点滴室はベッドがカーテンで区切られていて全部で二十人くらい寝れる広い部屋だった。隼太は下がパイプになっている椅子でお父さんに付き添った。お母さんにはメールで事情を送信してある。
「お父さんが早く治って復活してくれないと困るんだよね」
「え?」
「だって壮太のところにサンタクロースが来ないだろう」
「なに言っているんだ。サンタクロースはお父さんが入院していても来るよ」
顔を引きつらせながらお父さんが言う。隼太は目尻を緩めた。
点滴の途中で先ほどの医師が来た。
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