風邪を甘くみたらいけない

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 八時半になってようやくお父さんが起きてきた。スウェットパジャマでソファに腰をおろす。隼太は言った。 「十二月だからショッピングモールは混んでいるかな? それともまだクリスマスや正月には早いから大丈夫か。行ってみないと分からないな。お父さん、早く着替えて朝ご飯を食べたほうがいいよ」 「相変わらず隼太は大人みたいな喋り方をするな。顔を洗ってから着替えてくるよ」  この前家族でショッピングモールに行ったのは十一月だった。隼太と壮太はダウンジャケットを買ってもらった。確かその日も戦隊ヒーローショーがあった。悪者が勝ちそうになる場面では隣の小さい子が泣き始めた。そこで戦隊ヒーローが現われて悪者を倒す。パターンは決まっているなと思うと興ざめした。今日もがっかりするのだろうなと思うが壮太のために付き合ってやらなければいけない。それに小さい子の反応は面白い。  お父さんがグレーのセーターにジーンズで二階から戻って来た。キッチンのテーブルに着くと「はっくしょん、はっくしょん」とくしゃみをした。隼太はティッシュを取るとお父さんに渡した。鼻水が垂れている。 「おお、悪いな」 「お父さん風邪ひいたんじゃない? 声もかすれているし」 「そうかな。熱を測ってみるか」  隼太は薬箱の中から体温計を取り出した。 「はい」  できすぎた子供だなと思いながらお父さんは受け取るとスイッチを押して脇に挟んだ。三十七度五分。これではショッピングモールに行けない。隼太は体温計を見て肩を落とした。
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