風邪を甘くみたらいけない

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 グラウンドにでるとサッカーボールを中央に置く。じゃんけんをしてどちらが先にボールを蹴るか決めた。隼太だった。  ドリブルをしてグラウンドを走る。聡はボールを奪いに必死だったが隼太はうまくかわしながらゴールに向かった。シュートをするとボールは勢いよくネットに当たった。 「僕が一点だな」  肩で息をしながら隼太は言った。 「次は僕が先にボールを蹴らせてよ」 「いいよ。順番にしよう」  そう言ったときにグラウンドと道路を隔てるフェンスにこちらを見ている人影があった。目を凝らして見てみるとお父さんだ。寝ている筈がこんな寒い日に外に出たらいけない。隼太は聡に言った。 「ちょっと待っていてくれる? 病人が来ちゃった」 「え? もしかして弟の壮太くん?」 「ううん。お父さん」  説明すると時間が掛るので隼太は右手の手のひらを聡の顔に向けてフェンスに向かって歩いた。近づくとお父さんの表情が分かってくる。嬉しそうに口角をあげている。隼太は言った。 「お父さん、寝てなきゃ駄目じゃないか」 「三十七度に下がったんだよ。これくらいだったら大丈夫だろう。ショッピングモールに行こう。戦隊ヒーローショーが見られるぞ」  風邪薬が効いたようだ。熱は薬の効いている間だけ下がるだろう。油断は禁物で寝ていたほうがいいのにお父さんは朗らかに笑っている。 「風邪はそんなに簡単に治らないよ。栄養ドリンクを飲んで大人しく寝てなくちゃ。悪化したらどうするの?」 「大丈夫だよ。サッカー、中に入って観てもいいか? 参加したいけど人数が合わないだろう」  公園に立っている丸い大きな時計は九時を指している。ショッピングモールまでは車で片道三十分。お昼を食べることを考えてもサッカーは十分楽しめる。隼太は仕方なく頷いた。
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