風邪を甘くみたらいけない

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 お父さんが膝に両手をつきながら言う。結局四試合した。隼太のチームは三勝一敗だった。  公園の時計を見る。十時十五分。もう帰ったほうがいいだろう。隼太は聡の肩を叩いた。 「サッカーは終わりだ。またやろうよ」 「うん、僕は明日でもいいよ。犬の散歩に来るし」 「そうだな。一応ボールを持って九時に来てみるよ」  住宅街をお父さんと歩いて家に帰る。北風がますます強くなったようだ。今日の最高気温は十二度だとニュースで言っていたが風のせいで体感気温は低い。  家に着くとお父さんと洗面所に行く。ポンプ式の石鹸で手を洗いうがいもした。お父さんの腕を見ると鳥肌が立っていた。 「鳥肌が……寒いの?」 「ああ、少しぞくぞくしてな。風が冷たかったからだろう」  隼太は小学二年生のとき三十九度の熱を出す風邪をひいた。そのとき寒気がして苦しかったのを思いだす。お父さんも熱が高くなることが直感で分かった。 「今日のショッピングモールはやめよう。家で壮太の好きなアニメを観て過ごそうよ」 「なんでだ? 隼太はサッカーで疲れたのか?」  まあ、そういうことにしといてもいいが、お父さんはなんて鈍感なのだろう。隼太はタオルを渡した。 「風が強い中、走り回ったからね」  二階に行って新しいトレーナーを着てジーンズを穿いた。壮太が一階から上ってきて部屋のドアを開けた。隼太は去年の三月まで壮太と部屋が一緒だった。五年生になって一人部屋をもらったのだ。でも壮太は寂しいのか夜になると眠くなるまでここにいるし、ノックもせずに勝手に入ってくる。
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