風邪を甘くみたらいけない

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「僕、去年サンタクロースを見たよ。ドアから入って来て枕元にプレゼントを置いてくれたんだ。赤い服を着て真っ白な髭を生やしていた。朝プレゼントを見たら僕の欲しかった恐竜のフィギュアだったんだよ」  小学二年生の弟は興奮したように喋る。兄である川島隼太(かわしまはやた)がクリスマスの話題をしたからだ。  今日は十二月の第二週に入ったばかり。隼太はお母さんが見るニュースをなんとなく見ていた。天気予報のお姉さんとお兄さんが立つ後ろにはクリスマスツリーのイルミネーションがあった。隼太は弟の壮太(そうた)に「もうすぐクリスマスだよ」と言った。そうしたら恐竜のフィギュアの自慢だ。隼太は辟易した。小学五年生の隼太はサンタクロースなんて信じていない。トナカイに引かれたそりでプレゼントの袋を持ったサンタクロースが空を飛んでいるところなんて見たことないのだから。きっと壮太が見たのだってお父さんに決まっている。  土曜日や日曜日の朝はお父さんが中々起きてこない。今日は日曜日だ。お父さんは昨日が休日出勤で隼太が寝る九時になってもまだ帰って来なかった。お母さんに訊いたら飲み会だとか言っていたが大人って何故お酒を飲むのだろう。  一週間前に約束したのだが、今日は家族みんなでショッピングモールに行くことになっている。マフラーを買ってお昼を食べて三時からの戦隊ヒーローショーを見るのだ。隼太は戦隊ショーも胡散臭いと思っているが見るのは楽しい。
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