Episode(1):ソワレと九郎さん

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Episode(1):ソワレと九郎さん

『𝑀𝑒𝑟𝑟𝑦 𝐶ℎ𝑟𝑖𝑠𝑡𝑚𝑎𝑠』 『HAPPY NEWYEAR』 初雪を待ち望む師走の季節。 こんな時期は大切な人と過ごしたり 独りでのんびりする人が多いと聞く。 けれど俺たちトナカイにとっちゃあ 365日の中で1番忙しい時期。 そして…何よりも心待ちにしている時間だ。 「九郎(くろう)さん、準備出来た?」 縁側(えんがわ)でボーッとしている老人に そう声を掛けた瞬間 ぷーん、と鼻を突く(かぐわ)しい香りが 鼻腔(びこう)をくすぐってくる。 …いや。 そんな官能小説みたいな 馬鹿みたいに色っぽい表現要らねえか 「あ……ううう」 気持ちが悪いのかモゾモゾしながら (うるし)塗りの柱を手の平でバンバン殴っている彼… これが、あの【サンタクロース】だと 信じる子供がいるだろうか? 「またですか…」 静かにため息を吐くと 毛布に九郎さんを寝かせ 赤ん坊のように足をあげてズボンを脱がせた。 先程の馨しいなんて冗談言ったのは この茶色い物体の事だ。 あえて何かは言わないが 察しのいい皆なら分かってくれるだろ? …これが俺らトナカイの本業さ。 雀の涙程のお駄賃しか貰えないがな。
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