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――この任務が成功したら、組織を抜けさせてください――
強く宣言して飛び出してきたのに、このザマだ。
任務が失敗したどころか、怪しげな医者に看病されている。
(こんなことなら、死んだ方がよかった)
黙ったままのトワ。
ロクザンは立ち上がると隣の部屋から白い器を運んできた。
「薬です。飲めますか?」
トワが反応しないことには厭わない様子で、ロクザンはベッドの横に腰かけた。
そして銀色の細長いスプーンで、器の中身をすくう。
「とろみがついているから、むせることはありません」
ロクザンが、スプーンをトワの唇につけた。
促されるままトワは口をほんの少しだけ開く。
とろり、とゼリーよりもやわらかな液体が、トワの喉を通っていった。
(……苦っ)
トワは思わず眉をひそめる。
淡いピンク色の瞳が僅かに潤む。
(しまった。致死毒かもしれないのに、疑いもせず)
反応に満足したのか、ロクザンはくすくすと笑った。
「薬だから、苦いのは当然です。反応できるなら大丈夫そうですね」
ロクザンは器とスプーンを脇のテーブルへ置いて、空いた手のひらをトワの顔に翳す。
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