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「いたるところの骨が折れ、大量に出血していました。普通ならば命を落としていてもおかしくありません。まずは、ここでしっかりと療養しましょう」
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白い診療所に出入りするのは、どうやら怪しげな医者だけらしい。
褥瘡ができないように体の向きを変えてくれるときは、初めの方こそ警戒も緊張もした。
しかし、トワには皮膚感覚が戻ってきていない。なすがままにされている。
さらに全身は包帯でぐるぐる巻きにされている。魔法付与された包帯で、取り替えなくても清潔さが保てるらしい。
質の高い医療のフルコース。
日増しに、トワは罪悪感を増していった。
「なんで、見ず知らずのわたしを看病してくれているんだ?」
ある日のこと。
トワがベッドから尋ねると、ロクザンは両腕を組んでみせた。
「医者たるもの、傷ついている者を放っておくことはできません」
「たとえそれが暗殺者でも?」
もはや黙っていることはできなかった。
物心ついてから、他人に優しくされたことが初めてだったのだ。
「暗殺者は自分のことを暗殺者だと名乗りはしないでしょう」
「それはっ、そうだけど」
ぎゅっ、とトワは拳を握りしめた。
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