触れた星へ、愛を乞う。

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 するとフードを被ったままとはいえロクザンが顔を近づけてきた。 「飲めないなら口移ししましょうか?」 「い、いやっ、それはいい!」  ぐいっ。ごくっ。  トワは一気に薬を飲み干して、舌を出す。 「……うぇえ」 「おめでとうございます。よく頑張りましたね」  トワの口へ、ロクザンが何かを放り込んだ。  反射的にトワは口を閉じる。 「甘い」 「手を出してごらんなさい」  言われるがままにトワは両の手のひらをロクザンへ向けた。  しゃらしゃら……。  トワの手のひらの上は、あっという間に色とりどりの金平糖でいっぱいになった。 「これは?」 「金平糖(コンフェイト)といいます。とびきりの秘密を教えてあげましょう、お姫さま」  トワはロクザンに名乗っていない。  ロクザンも訊いてくることはない。お姫さま、と呼んでくる。  そのたびに、トワは胸が痛む。  最初の頃は、自分はお姫さまなんかじゃないと主張していた。しかし名乗りたくもないので、甘んじてその呼び方を許していた。  ロクザンが自らの人差し指を唇に当てた。 「誰にも言ってはいけませんよ。星は昼間なら、食べることができるんです」  トワの手の上で、金平糖はぴかぴかと煌めいている。  
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