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高い位置にある窓からは、夕方を告げる光が射しこんできていた。
「ごちそうさま!」
与えられた病人食を食べ終え、苦い薬も飲み干す。
トワはあっという間にほぼ普通の生活ができるようになっていた。
「驚異の回復力ですね」
ロクザンが微笑む。
応じて、トワはぶんぶんと腕を振り回した。
「当たり前だろ。体力には自信があるんだ」
ベッドから立ち上がったトワ。
全盛期より筋肉が落ちていても、普通の女性よりは体格がいい。
初めてトワはロクザンの目の前に立った。
(わたしより、頭二つ分、背が高い。間近で見ればマント越しでも判るくらい、筋肉もしっかりとついている。栄養状態もかなりよさそうだ。……やっぱり、この男はただの医者じゃない)
「世話になった。ここにこれ以上いてもあんたの身に危険が及ぶだけだから、明日には出て行くよ」
「危険なんてありません。あなたこそ、まだ万全の状態ではないでしょう。もう少しこの診療所で過ごすことです」
有無を言わせぬ口調。
ロクザンはトワの両肩に手を置くと、すっとベッドに座らせた。
トワは部屋をぐるりと見渡した。
そして、いたるところに目を凝らす。
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