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真っ白。
目覚めたトワが最初に目にしたのは、白い天井だった。
(……ここが、死後の世界?)
痛みはないが、感覚もほとんどない。指先一本動かせない状態。
どうやら、ふかふかのベッドに寝かされているということだけは理解した。こんなにやわらかくて清潔なベッドで眠ったのは何年ぶりだろうと、トワは微睡みに身を委ねる。
石けんのにおいが心地よく、再び瞼を閉じようとしたとき。
「おはようございます、お姫さま」
傍らから、軽快ながらもどこかくぐもった声がした。
(誰?)
なんとか目線を動かすと、白いフードを目深に被った、マント姿の人間が立っていた。
声と体のラインで、それが男性だということだけは理解する。
「僕は医者のロクザンといいます。瀕死のあなたを拾って、国境そばの診療所まで運んできました」
(瀕死……。そうだ。わたしは、依頼に失敗したんだ)
トワは静かに唾を飲み込んだ。
男は彼女へ『お姫さま』と呼びかけたが、実際のトワは隣国からやってきた暗殺者だ。
親の顔はほとんど覚えていない。
物心ついたときには暗殺組織で育てられていて、10歳で既に『仕事』をこなすようになっていた。
そして今、16歳。
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