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伊織の側から片時も離れないから、仕事は溜まっていった。
周りの人間や母は何やら小言を言っているが、正直どうだっていい。
どうせ仕事をするために家を開けたところで、伊織のことが心配で何も手につかないだろうし。
泣きながら目を覚ましていないか。
ご飯は食べているか。
熱は出ていないか。
痛いところはないか。
そんなことを気にするくらいなら、彼女が目を覚ました時も抱きしめていたいし、ご飯を作って口元に運んでやりたいし、熱が出たなら薬を用意してあげたいし、痛いところがあるなら背中をさすってやりたい。
俺に出来ることがあるなら、なんだってしてやりたかった。
それが俺の幸せでもあった。
しかし、いつまでも苦しんでいる伊織を見ているわけにも行かず、俺は彼女に内緒で伊織の実家を訪れた。
事情を説明してもらう必要がある。
何を聞かされたとしても、俺は伊織から離れない自信があった。
伊織が隣にいない人生など想像することも出来ないほどに、俺は彼女に救われているのだから。
航が私の隣に居てくれる。
それだけで呼吸が少し楽になる気がした。
だけど、航には湊との間に何があったのか、ううん、湊に何をされたのか、どうしても知られたくなかった。
だから、卑怯だけれど私はただ黙っていた。
肝心のことは何も話さなかった。
両親を呼ぼうかと言ってくれたけれど、それも断った。
何がしたいのか、自分にも分からない。
それでも航は私の側を離れないから。
私はいつまでも彼に甘えていた。
だから、天罰が下ったのだろうか。
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