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彼の提案にはちっとも魅力を感じない。
それなのに、まるでパブロフの犬みたいに疼くこの身体が憎い。
カッと頭に血が上った私は彼の提案を呑んでいた。
「分かったわ。ちゃんと私の人生を豊かにしてよね、名取さん」
今の私に決まった相手がいないことだけが幸いだ。
「もちろんだ」
彼はそう言うと、私の顎を掬いそのまま唇を啄んだ。
ちゅっと軽いリップ音が鳴る。
「俺のことを名前で呼ばなかったお仕置きだ。これからよろしくな、伊織」
「なっ!!」
私は彼を絶対好きになんかならない。
誰かのことで必死になって、みっともなく馬鹿を見るのはもう懲り懲りだったし、何より彼の方こそ私のことを好きになんかならないだろうから。
だって昨日のことすら覚えていないのよ。
そんな相手を好きになるのはどう考えたって不毛だ。
だから、決めた。
今は余裕綽々のようだけれど。
貴方には私のことを好きになってもらうわ、航。
それで、私のことを好きになった貴方のことを私は捨ててやるの。
ラブ イズ ウォー。
いざ、開幕。
先に落とされるのは一体どちらの方かしらね?
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