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広大な青い空と真っ白の雲、そして透き通ったエメラルドグリーンの海が私を呼んでいる。
「うっわぁぁぁ! ものすごく綺麗!」
地中海から吹き込む潮風がワンピースの裾をはためかせる。
打ち寄せる波が私の傷ついた心に寄り添う。
「……勿体ないだけで来ちゃったけど、既に来て良かったかも」
二人分の航空チケットに、用意された五つ星ホテルのスウィートルームや三つ星レストラン。
これからの一週間、私一人だけでそれを満喫するのだ。
ふんわりとした茶髪の彼の面影を波に返した。
はにかんだ頬に出来る控えめな笑窪がとても好きだった。
大きく口を開けて笑う無邪気さに何度も救われた。
だけどもう、それは昨日までの話だ。
彼は既に私の彼ではなくなったのだから。
リゾート特有の非現実さが、今の私には有難かった。
傷付いた心を自然に癒してもらった私は気持ちを切り替える。
意気揚々とした足取りで聖ニコラス聖堂に向かって歩き出した。
「さぁ、まずは観光よ!」
ここはモナコのモンテカルロ。
結婚を約束していた元彼にドタキャンされた上にそのまま振られた失恋女が遊びにくる場所ではない、決して。
異国情緒に溢れるこの街で、私はひとりの男と出逢う。
この時はまだ、彼が私の運命になるだなんて知る由もなかったーーーー。
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