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だが、もしこれが夢ではなく現実だった場合どうする。
俺は無意味に自殺をしてしまう事になる。
そう思い、再度当たりを見渡す。
先ほどから何度か声を張り上げているが、この声に答える何かしらの気配は一切しない。
普通に考えて、このような状況に陥る可能性はあるのだろうか。
「ははっ……」
自然の乾いた笑いがこみ上げてくる。
このまま人に会えず、状況も理解できないまま人生が続くとして、果たして生きる価値などココにあるのだろうか。
確か人間は、誰とも対話せずに生きた場合、長生きできないと何処かで聞いたことがある。
ナースセンターの中に入ると、そこにはいくつものカルテがテーブルに乱雑に置かれているが、よく見ると埃をかぶっていた事に気づいた。
電話機も見つけた為、ひとまず110番にかけて見る。
しばらく待っても誰も出る気配はない。
「確定だな」
そう呟くと、俺はいつの間にか電話機の横にあったメスに手を伸ばしてそっと自分に突き立てた。
呼吸が乱れ、手が震える。
だが、夢から冷める方法は今の所これしか見当たらない。
「おい……どうした」
動かない自分の手に、問いかける。
「このままだと、一生目を覚ませないぞ……それでもいいのか?」
己に言い聞かせ、メスを再度強く握る。
だが、いざ自分の首を切ろうとすると、思うように力が入らなかった。
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