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だが、それでいいかもしれない。
もし、この世界が現実でなかったとして、本当の現実の世界がこれ程までに平和とは限らないだろう。
ならば、夢であったとしてもこの世界で生きた方がいいに決まっている。
そう思った瞬間、まるでこの世界に最初から居たかのように記憶が蘇ってきた。
先ほどの彼女の正体が自分の妻である事、そして俺は大手企業に努めている事。
何もかもが理想的な記憶だった。
こうして、俺はそこで数年間を過ごす事になる。
だがある日、悲劇が起きた。
俺のミスで大切な取引相手に大きな損失を与えてしまい、取引相手が今後こちらの要求を一切飲まないことが決定してしまったのだ。
数千万という損失が出たこの大きな失敗は、俺のこれまでの平和な人生に《クビ》という絶望押し付けてくる。
どうする、こんな状況で妻のいる家に帰る事など出来ない。
もし、この事実を知ってしまい、妻に嫌われたらどうする。
そんな不安が膨れ上がり、徐々に体が震え始める。
これは、恐怖に近いかもしれない。
そう思ったとき、ふと数年前の出来事が思い出された。
「そうだ、これも夢なんだ」
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