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「おい、もう授業終わったぞ」
ふと声をかけられ顔を上げると、見慣れない教室が目に飛び込む。
咄嗟に首元に手をやるが、噛みちぎられた痕跡はない。
「……夢?」
それにしては、驚く程にリアリティのある夢だった気がする。
「何だ、寝ぼけているのか?」
俺の丁度正面に1人の男子学生が立ち、徐に顔を覗かせて来たが、その人物に見覚えはなかった。
誰かと勘違いでもしているのだろうか。
「……誰だ?」
素直に尋ねてみると、相手は俺のそんな反応が予想外だとでも言いたげに目をまるくする。
「おいおい、マジで寝ぼけているのかよ」
まだ夢の中にでも居るのだろうか。
頬をつねれば痛みを感じ、学校の特有の生活感ある匂いすら感じる。
つまり、ここは現実と捉えていいのだろうか。
いや、先程の夢も同じく五感のある世界だった事から、安易にそう決めつけるのは違うかもしれない。
「なあ、俺はこの学校でどんな立ち位置に居るんだ?」
目の前の生徒にそう問いかけると、そいつは俺の額に触れて来た。
冷え性なのか、触れられた部分が冷たく妙に心地がいい。
だが、その後そいつの発した「つまらない冗談を言うなんて、熱でもあるのか?」という問いかけによって、心地よさは一気に不快なものへと変わった。
どうやら、この人物は俺の言葉を理解しようとする気がないらしい。
このまま食い下がった所で意味はないと感じた俺は、その手を振り払って立ち上がった。
「悪い、少し頭冷やしてくる」
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