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痛みを感じない世界は夢である。
そんな話を聞いたことがある。
つまりそれは、痛みを感じる世界が現実ということだろう。
ならば現在俺の視界に広がるこの荒廃した世界も、現実と捉えていいのだろうか。
「何だよ、ここ……」
見慣れないビル街に絡み付く蔦や木、コンクリートの隙間から生える雑草や苔、周囲には人の気配はなく、ただ自然の世界が囁く音だけがする。
有機物と無機物、人工物と自然、普段別々の存在としてそこにあったもの達が絡み合い、今ではこのビル街を自然が飲みこもとうとしているようにも見えた。
目線を落とすと、俺が先程まで眠って居たらしい大きなカプセル型のケースがそこにあり、そのケースにはいくつもの管が繋がれていた形跡がある。
中身はまだ微かに冷たい。
もしやこのケースは冷凍睡眠に使われる機材なのではないか。
そう思考がたどり着いた途端、現在自分が置かれている状況が徐々に理解されていった。
多分俺は冷凍睡眠をさせられていたのだろう。
そして、そんな最中に何らかの理由で地球は滅亡し、冷凍されていた俺は助かった。
様々なコンテンツで一度は見たことのある展開が、今正に自分の身に降りかかっているのだ。
考えが飛躍し過ぎている気もするが、正直それ以外にこの状況を説明できるものが思いつかない。
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