意外にも?

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意外にも?

斉間との初2人飲みは普通に楽しかった。 もっと早く誘えば良かったと少し後悔したくらいだ。 折角の機会なので普段は話さないようなことも沢山話した。 学生時代の話や好きな漫画、休日の過ごし方等、斉間が入社してから4ヶ月近く経つのに今更かというような話題ばかりだ。 それだけ私に余裕がなかったんだと反省した。 話の中で斉間が実は人見知りだと告白してきた。 「営業なのに?」とよく言われるそうだが……わかる。めっちゃわかる。 なぜなら私もそうだから。 知った人が前を歩いていてもなんとなく声を掛けられないとか初対面の人とはあまり距離を詰められないとか。全く同じだ。 営業をやっていても苦手なものは苦手なわけで、それでも無理矢理仕事スイッチをオンにしてしゃべくってるんだよこっちは、といつも思っている。 意外な人見知りという共通点から急に仲間意識が芽生えてきた。 最初は仕事以外の話をあまりしなかったり表情が読めなかったりしたのは人見知りによるものだったようだ。 早く言ってよー これまた今更だが仲良くなれそうな気がしてきた。 そう思うとまた楽しくなりガブガブと飲むスピードに拍車がかかった。 斉間が飲んでいて美味しそうだったというのもあって、いつもは飲まないような日本酒を注文し飲み干してしまった。 カーッと身体が一気に熱くなり喋りも覚束無くなる。 調子に乗ってしまったと気づくのは勿論後になってからだ。 終電に余裕を持って店を出る頃には私は文字通りベロベロになっていた。 そんな私を心配して斉間が家まで送ってくれることになった。 素面の私なら気を遣われるのは申し訳ないので断っていたのだが、酔って楽しくなっている私はその提案にすんなり乗ってしまった。 駅から徒歩15分の住宅街に私の住むマンションがある。 そこそこ歩くので夜中まで仕事をしていたときは自腹でタクシーで帰っていた。 今は夜風に当たって酔いを覚ましつつ斉間と並んで歩いている。 「路線違いますけど直線距離なら僕らの家結構近かったんですね」 「ホントだね〜ご縁だね〜」 「近いんで今度家に遊びに行ってもいいですか?」 例の意地悪そうな顔で斉間が言う。 また困らせたかったんだろうが残念、私は酔ってますー 「おーいいよいいよ!一緒にゲームしよう!」 「…そんな事言っていいんですか?一人暮らしですよね?」 少し斉間が驚いた顔をした。 酔えば普段は言わないような返しも出来ますとも。 「だぁって私ら人見知り仲間じゃーん。変な事しないでしょー?信じてるしね!」 「いや、その牽制はズルいでしょ…」 「ズルいのは斉間さんでしょ!最初油断させといてさぁ〜とんだ人食い花だよ!」 「人食い花…?何ですかそれ。てか油断させといてって別に普通でしたよ僕」 「えぇ〜?…おっと」 フラフラ歩いていたらパンプスのヒールが地面を捕らえ損ねて転けそうになった。 斉間が慌てて私の腕を掴み支えたくれた。 「大丈夫ですか?」 私の体重をやすやすと支える斉間の腕は、倉庫の時と同じくスーツの上着を脱ぎ腕まくりをしていて丸見えだった。 ふと思い出し 「斉間さん結構鍛えてる?部活何してた?」 と質問してみた。 あの時は全く興味がなかったけれど、今はなんとなく知りたくなっていた。 人見知り仲間だしね。うん。 「中高は特に何もしてなかったんですけど、大学の時からボルダリングしてます」 「ボルダリング!!シャレオツ!」 「どこがですか…」 そんなリア充趣味があったとは。 競技としてやっていたかもだけど。 「へ〜なるほどね〜倉庫ん時も逞しかったもんね〜」 「ときめきました?」 「えー?それはないけど」 「ないんかい!」 斉間がそう言った後口を尖らせた。 「んーでも頼もしかったかな」 これは正直な気持ちだ。 「……それはどうも」 「はい!照れた!」 両手の人差し指でうりうりと斉間を突っつくと斉間はムッとして 「うるさいですよ。早いとこ帰りましょうね」 と私の背中を押し帰宅するよう誘導した。 …やっぱ照れてんじゃん。
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