(頭)大丈夫?

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(頭)大丈夫?

蟹江とのランチから数日後。 この日は取引先との食事会があった。 相手は同世代の担当者でずっと飲みに行こうと言いながら行けていなかったのだが、お互いの業務も一段落しようやく実現したのだ。 こちらが客の立場なので、うちのオフィスでの商談ついでに終業後近隣店舗で飲みに行くことになった。 22時頃解散した後、私は定期入れを忘れたのに気付き会社に戻ることにした。 頼んでもいないのに斉間が一緒に行くと言うので普通に断ったら『和泉さん酔ってるから危ない』と食い下がられ、結局下で待っているという妥協点に落ち着いた。 確かに酔ってはいるが取引先との飲みだったし常識的な範囲内なはず。多分。 斉間の親切心なんだろうがちょっと過保護だと思う。 ドアを解錠して入るとフロアの奥の照明が付いたままだった。 誰かいるのだろうかとそちらに近づくと鎌田が残っていた。 イヤホンをしていて私に気付いていないようだったので何も言わずに定期入れを取って帰ろうかとも思ったが、実は気付かれていたら後から面倒でもあるなと思い一応声を掛けた。 「鎌田さーんまだ残ってるの?」 「うわっビックリしたっ!!…なんだ和泉さんか」 和泉さんで悪かったな。誰だったらいいんだよ。 「今日遅いの?大丈夫?」 「別に遅いのは今日だけじゃないですから…」 可愛くな!もっと言い方ないの? 私だって本気で心配してるわけじゃないし。 話し掛けた事を即後悔した。 「私忘れ物取りに来ただけだから。お先に…」 とサッサと消えようとすると何故か鎌田に睨まれた。 「…和泉さんはいいですよね。斉間さん入ってきて急に元気じゃないですか」 下で斉間が待っているのを知られているのかと思いギクリとした。 そして明らかに嫌味を言われている。 「元気っていうか確かに業務は楽になったけどさ、斉間さんいるって言ってもまだチーム2人だし。商品プロモも求人募集してるんでしょ?」 「募集してるからってすぐに入るわけじゃないし!そういうこと言ってるんじゃないですよ!」 普通に質問しただけなのにキレられた。 話振ってきたのそっちじゃないの? うちのチームだって募集かけまくってようやく斉間が入社してくれただけで状況はどこも同じですけど? 「じゃあ何が言いたいの?」 私から冷静に返されたのが意外だったのか、鎌田は涙目でグゥと黙った。 「……斉間さんと仲良くしちゃって…付き合ってるんでしょ!?」 「はぁ!?付き合ってるわけないじゃん!ただの部下だよ!憶測で適当なこと言うのやめてくれる?」 話飛び過ぎだし訳のわからんことを言うな。 仕事の話どこいった。 鎌田のあまりの斜め上な発言にさすがに感情的になってしまった。 「だって斉間さん全然なびかないんだもん!2人共気づいてないんですか!?お互いに目で追ってるじゃないですか!」 「いや、それ絶対気のせいだし」 私が斉間を目で追っているのがバレていたのに驚きつつ『お互いに』という部分が引っ掛かった。 斉間も?そんな気配はなかったけど… てゆーかなびかないのを私のせいにするなよ。 オトせるのがデフォルトと思ってるとかマジヤベエな。 「なんで私ばっかりこんな目に遭うの!?夏目さんは急に辞めるとか言うし広報チームは分担してくれないし!みんな酷い!」 鎌田がガバっと机に突っ伏し泣き始めた。 肩が震えているだけなので本当に泣いているかは謎だが。 とりあえず鎌田の発想が怖い。あくまで自分は被害者なんだな。 協力してもらえない理由がどこにあるかわかっていない。 みんな余裕がないと言ってもこの会社は基本優しい人ばかりなので(勿論例外もいるが)、普段お世話になっている人や感じの良い人には手を差し伸べるだろう。 そうしてもらえないのは自分の言動に起因しているというのに。 その頭は脳みそ詰まってるのかな?
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