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人が足らない!
斉間柊介が入社した。
念願の増員だ。
簡単な研修を終えMDチームに配属される。
「お疲れ様です。面接ではありがとうございました。改めましてこれから宜しくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ宜しくお願いします」
私から御礼を伝えた。
こういうのは最初の印象が大事だ。
早期退職を回避するために。
会社のクソっぷりが即バレしても上司に恩義を感じていたらすぐ辞めようとは思わないだろう。
私がそうだったから。
元上司は先に辞めたけど。
さて挨拶もそこそこに早速業務の引き継ぎを開始する。
斉間はメモを取りながら真剣に聞き入ってくれている。
よしよし。真面目で良い人っぽい。
即戦力たる経験者は前の会社のルールを持ち込みたがる人が多いが斉間はそういうタイプでもなさそうだ。
もう辞めてしまったがある人はことあるごとに「前の会社じゃこんなことあり得ませんよ」と反論して来て、いつも『シランガナ』と心の中でツッコんでいた。
郷に入っては郷に従えって言葉知らないの?
てかうちの会社がおかしいことは私が1番良くわかってるっつーの。
「…というわけでまずは売上報告と在庫表の販売数に差異がないか見てもらっていいですか?その後にこの報告書に数字を記載して金額に換算してください」
「承知しました。すぐ取り掛かります」
このとりあえずやってくれる感いいわー。
本当なら手取り足取り教えてあげたいところだが時間ないのでやってみてわからないところを聞いてもらうしかない。
在庫表や報告書のフォーマットは一目でわかるようになっているのでやりながら頭に入るはずだし。
このフォーマットも私が作り直したんだけどさ…
この日は溜まっていた数字の管理業務を処理することができた。
助かった。
ランチこそ行けなかったものの斉間のお陰でコーヒーブレイクするくらいの時間は作ることが出来た。
トイレと打ち合わせ以外で席を立つなんていつぶりだろうか。
給湯室でコーヒーを入れていると同僚の蟹江優莉に声を掛けられた。
プロモーション事業部広報チームに所属し会社の公式サイトの制作を担当している後輩だ。
「あれ珍しい。なんか席にいない和泉さん見るの久しぶりかも」
「ようやく例の後任入って一息ついたからコーヒー入れてるだけだよ。これからまた打ち合わせ」
「相変わらず5人分の仕事してるんですね。後任の人どうですか。まともそう?」
「今んとこまともっぽい。この時期に入ってくれただけ感謝だよ」
「へーつかホント人入れるの遅いですよねこの会社。うちのチームも本来の仕事じゃないの増えてるし」
蟹江のチームには私のチームが制作したグッズの告知等の協力をしてもらっている。
これまではチーム内で完結していたが、さすがに私1人ではそこまで手が回らなかったのだ。
斉間が仕事に慣れ落ち着いてきたらまた引き上げるつもりだがそれはいつになるか。
「うちの仕事もだもんね。ゴメン」
「いやいやさすがに和泉さんの地獄っぷり見てたら断れないですよ。和泉さん何にも悪くないのに」
「有り難や…」
何気に広報チームもギリギリの人員で回しているのであまり頼ってばかりはいられない。
というか余裕のある部署なんてこの会社に存在しないけど。
暇そうにしてる無能共は大勢いるのにね!
人はいてもなぜか慢性的な人手不足なんだよね!謎!!!
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