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ハラすなや!
昨日は22時前に業務を終え帰宅した。
なぜか斉間が駅まで送ってくれた。路線違うのに。
ジェントル斉間。モテそうだなー
こうやって女性扱いしてもらえるのっていくつまでなんだろう。
私は可愛げがないからそろそろ怪しいな。
彼氏がいなくてもいいけど女と見られなくなるのはキツいかな。
オタクであれど全てを捧げる程好きなものがないから寂しいのかもしれない。
最近友達と遊ぶ元気もないし。
仕事以外のもの作らないとな。
そのためには先立つもの。時間を作らねば。
朝会社でサンプルをピックアップして取引先の最寄り駅に向かった。
待ち合わせの東口改札を出ると既に斉間が待っていた。
「おはようございます。お待たせしました」
「おはようございます。僕も着いたばかりなので大丈夫です」
「なら良かった。歩いて10分くらいだからゆっくり行こうか」
「はい」
2人で歩き始める。
晴れて日が差しているのでまだマシだが3月でもコートが手放せない寒さが続いている。
歩きながら商談内容を確認しつつ他愛もない話もした。
「こちらがファーストサンプルのぬいぐるみです。どうぞお手に取ってご確認ください」
「ありがとうございます」
この日の商談相手はスマホゲームメーカーのライセンス部の担当者で、スマホゲーコンテンツのキャラクターぬいぐるみの監修と販売先についての相談にやって来た。
「私の方で修正を入れた方が良いと思う部分をまとめましたので、まずはそちらを説明させていただきますね」
担当者は30代後半の男性とその部下の20代半ばの女性だ。
何度も商談をしている相手なので緊張はしないが実はちょっと苦手意識がある。
特に男性の方。
「黒目の色味をもう少し原作に寄せた方がいいと思うのですが色指定をお願い出来ないかと思いまして」
「番号指定ってことですか?」
「はい、出来ればPANTONE等で」
予想通り上司男が噛みついてきたぞ。
「あーでもまずはそちらで調整してもらえますか?」
「それでも問題はないのですがパソコンの機種によっていただいた立ち絵データの見える色味が変わってくるので可能な限り色指定をして最初から原作の色に近づけた方が確実かと」
「まぁわかるんですけどねえ〜開発に依頼するにはまずは御社がどれだけ努力したのかを見せないといけないじゃないですか。この状態では見せられないのでセカンドサンプルで頑張ってもらってから…」
「ですから弊社の指定した色が間違っていればまたさらに時間がかかるわけで…」
「そこは企業努力じゃないんですか?」
…話が噛み合わない。
恐らく上司男は現段階で開発に色指定の依頼をするのが面倒なのだろう。
先にこちらで近づけたものを見せて開発OKならそれはそれで良し。
開発NGなら「制作会社がイマイチなんですよね〜」等と言いながら開発に色指定をお願いするのだ。
このメーカーは力関係が圧倒的に開発に傾いていることで有名だ。
コイツは相手が社内の人間であろうと強くは出られないと見た。
心の中で溜息をつきつつ粘りに粘って、結果黒目用の刺繍糸の色候補をいくつか出し写真確認の上セカンドサンプル制作へ進めることとなった。
きっとこの上司男は社内でも自分が責任を取らされない方向へ誘導するような仕事をしているのだろう。
隣に座っている部下女の表情が消えていてウケる。
こういう上司との商談同席は苦痛だろうな。
販売先の相談をした後スケジュールの再確認をして商談を終えようとしたところで上司男が斉間の経歴等について話を振ってきた。
斉間が当たり障りのない回答を繰り返していると
「和泉さんの部下の女性が産休入っちゃったから急ぎで入社した感じですか?女性は出産がありますからねぇ。うちも女性多いから大変ですよ」
等と上司男がほざき出した。
はぁ??女性多いから何なの?
出来れば男性を採用したいって話?
てか産休『入っちゃった』って。
事故ったわけじゃないんだから。
言い方よ。
黙って資料を片付けながらイライラしていたら
「たまたまご縁があったというだけで産休は関係ないですよ。休業する理由は産休育休だけじゃないですから女性に限りませんしね」
と斉間が笑顔でぶった斬ったのでギョッとした。
斉間の前に座る部下女も目を瞠っている。
「ま、まぁそうですけどね」
「私では力不足かもしれませんが精一杯務めさせていただきますので宜しくお願い致します」
斉間は頭を下げさっさと話を切り上げてしまった。
何も言えなくなった上司男と部下女に見送られ取引先を後にした。
帰社する途中なんだか気まずくて業務確認をするだけにしておいた。
斉間がバッサリ言ってくれてスッキリしたものの私が御礼を言うのも変だし。
しかし上司男…
ぶっちゃけ見た目アレだし平気でああいう発言するし仕事適当だし絶対社内外で嫌われてんだろ。
管理職してるなら何がハラスメントになるか理解しとけ!
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