福袋争奪バトルの日

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福袋争奪バトルの日

 一月一日、元旦。  年明け初めての買い物といえば、そう、福袋である。  憧れのブランド福袋を手に入れるべく、私は元旦にデパート『シカクイ』へ向かうことを決意したのだ。  昨今、ネットで予約して買えるところが大半なのに、当日店舗販売しかないなんて鬼すぎるよ、と思いつつも、そのぶんネットで買うより良いものが入っているという情報を見てしまっては、欲しくなるだろう。  当日、始発電車で出発し、無事『シカクイ』の前にたどり着いていた。  一月になったばかりの早朝なんて寒いに決まっている。  分厚いコート、大判ストールを首に巻き付け、足元はブーツ。それでも体を包む寒さは完全に防げない。 「あと三時間……」  かじかむ手で、ポケットからスマホを取り出して時間を確認する。  デパートのほうでも一時間早くオープンしてくれるのはありがたい。  それでもまだ三時間あるのだ。この極寒の中で待つのはだいぶ辛い。  だが同じ状況のひとは周りにたくさんいた。  私と同じブランドを狙っているひとか、それとも別のところ目当てなのか。  並んでいるひとはもう百人近くいるだろう。  私は始発で出てきた甲斐あって、前から……五十人ほどであろうか。そのあたりに並ぶことができた。  これなら買えるのではないか。前に並んでいるひと全員が、私のお目当てと同じところ狙いでない限り。  期待と、どうしても拭えない心配で行ったり来たりする。
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