俺の事殺すの..?

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俺の事殺すの..?

「俺の事殺すの?」 愛してた人から発せられたその言葉はたまに心に浮かんでは溶けるように消えていく.. まだ、日が昇らない午前4時、悲しいような憤りを憶えるようなそんな気分のまま目を醒ます。 (こんな夢を見るのは緊張しているせいかな。 初出勤は明日からだというのにこんな調子じゃ先行き不安だな..。) ベッド脇のサイドテーブルに置いたスマホをおもむろに取り、ニュースサイトを見ながら1日を始める。 ほんのり栗色に染めたロングヘアを緩く結びながら。 ベッドの寝心地は正直よくない。 ベッド自体は最高品質の物なので"寝慣れない"といったほうが正しいか。 コレは1ヶ月前まで従兄弟のお兄ちゃんが使っていたベッドだ。 仕事のため従兄弟は半年間、東京へ行っている。 その間に空いたこの部屋を好きに使っていいと言われたので昨日から2ヶ月間お世話になることにしたのだ。 ここは都会。 ちょうどいい都会。 私がこの街に住むのは2回目だ。 大学を卒業してすぐ就職の都合で住み、惨めに逃げ帰った。 あの頃も私は不器用で仕事ひとつ満足にできず、やっと就職できた会社をすぐに辞めた。 何とかこの都会にしがみつこう足掻いてみたけれども、奮闘も虚しく、私は田舎に帰った。 (また、戻ってきたんだな..。 若い頃と見える景色は違うけど、やっぱり浮かれてしまう。 太陽が顔を出す前に懐かしい大通り沿いを散歩してこよっ。明日からはこんな余裕なんてないだろうし。) 明日からの再スタートに向けて今日1日を丁寧に過ごそうと決意しながら、まだ桜の花びらが舞い散る道を私は一歩一歩歩き出した。
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