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初出勤の衝撃
私は今、満員のバスの中で揺られている。
経験したことはある、経験したことはあるがコレはキツいっ!!
バスが揺れることもだけど、人に酔う。
(出勤前に具合悪くなってどうするの...。
ただでさえ緊張してるのに..。もう。)
約20分後、少し疲れた私が職場の前に立っていた。
ここはこの市の市役所だ。
二ヶ月間だけの臨時職員として私は働くことになる。
臨時職員なのに、筆記試験や面接まであるとは、さすが政令指定都市だ。
倍率も高かったはずなのに、私がここで働ける理由は過去の経験だろう。
私も田舎の市役所職員だった。
臨時職員期間も入れて23歳から31歳まで籍を置いた。
今回働く部署にも正規の職員として2年間働いたことがある。
この部署は全国共通である部署であり、やることも極端に増えたりしないので猫の手くらいの戦力にはなるだろうと思われたのだろう。
それに、仕事内容も入力作業だ。
(気楽に行こう..。)
指定された第2別館の1階に行ってみる。
産業系の部署が多く集まっているようで、スーツのジャケットではなく作業着を来てる人の割合が多い。
特に指定はなかったので、市民が出入りする出口から入る。
(いよいよだ..。)
「すみませーん。今日から臨時職員として参りました、花村 塔子と申します。
担当者の方いらっしゃいますかー?」
35歳にして自分の名前を叫ぶのは気恥ずかしかったが、仕事のためだ、仕方がない。
始業開始前だからか、ほとんどの人が一瞥もくれずにパソコンと向き合っている。
もう一度、叫ぼうとしかけた時1人の女性がトコトコとやってきた。
「遅くなっちゃってごめんなさい。花村さん?...でしたよね。
一応、私も同じ部署の長谷川 美樹っていいます。
ええと、花村さんの担当は白崎くんなんでこっちに来てくださいね。」
私の名前をうろ覚えながらも案内してくれてる長谷川さんは、"女"って感じの子だ。
ゆるっとしたポニーテールからはおくれ毛が適度に出ており、首元にはモチーフが小さなネックレスをしている。
体の線がわかりやすいパステルイエローのニットにネイビーのフレアスカート。
極めつけは少しとろんとしたタレ目にアヒル口だ。
(コレが"女"かぁ。都会のレベルは違うなぁ。)
私は2,3秒で分析し、そんなことを考えていた。
「白崎くーん。
おはよっ!!元気?お客さん連れてきたよー。」
長谷川さんは少し艶を帯びた可愛らしい声で長身のファイル片手に立っていた男性に呼びかけた。
白崎くんと呼ばれた男性はこちらを振り向きながら、こう言った。
「あぁ、今日から来てくれる臨時のおばさんね。
長谷川さん、わざわざありがとうございます。」
"白崎くん"は長谷川さんには笑顔を見せながらとんでもない暴言を吐いた。
(お、おばさんだとぉっ!?)
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