189人が本棚に入れています
本棚に追加
年下上司
おばさんショックに唖然としている私を置いて、目の前の美男美女は楽しそうにお話していた。
「白崎くん、先週はありがとね。やっぱり、白崎くんは若くて力もあるから頼りになるよ~。」
と言いながら、白崎くんの腕にパンパンと触れている。
「長谷川さんにはお世話になったので、何かあればすぐ言ってください。」
白崎くん、満更でもない様子が隠しきれてはいないが、サラッと答えてる。
まだ、色々と2人で話し込んでいてこちらなんか、眼中にない。
(おばさんねぇ..。まぁ、少し前ならこの歳でもおばさんって呼ばれてたしね。今の若い子からしたら仕方ないのかな。それにしても話長いな..。おばさん、働きたいのだけどっ!!)
「じゃあ、またお願いね~。」
私がアレコレ考えている間に話は終わったらしく、長谷川さんが去っていく。
"白崎くん"は長谷川さんに見せていた顔の緩みを全て引っ込めてこちらを向いた。
「あなたの担当になった白崎です。ええと..。」
「花村です。」
「そう、花村さん。やってもらうことの説明するからそこら辺に座ってください。まぁ、簡単な入力だからすぐできると思いますけど。」
そういいながら、恐らく県庁から来た資料と端末の入力方法を渡され、2,3回白崎くんがお手本で端末に入力してみせた。
レクチャーはそれだけで終わり、白崎くんはどこかに行ってしまった。
(前にこんなもの入力してたし、端末自体は触ったことあるからやれるけどね..。
けど、初日なんだしもうちょっと説明しようよっ!!
せめて建物の構造とかお昼時間のとり方とか基礎的なものは教えてほしかったよねっ!!)
頭に色々巡らせながら、入力を進める。
怒りが30%ほど頭の中を占めてても意外とできるものだ。
気になることもたくさんあるけど、私はおばさ...大人だ。
やりながら観察したり聞いたりしてその都度、解決すればいい。
少し生意気で気の利かない年下上司に対して軽く溜息をつきながら、煩悩を祓う如く入力を黙々と続けるのであった。
最初のコメントを投稿しよう!