第1話 次の方

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第1話 次の方

🎉       🎉        🎉 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!   🎉      🎉  突然、大きなクラッカーの音が響いた。 「はい、次の方どうぞ~!」  ふと気づくと辺りは白い靄のようなものに包まれた場所だった。  市役所の様なカウンターの向こうには緑の長い髪をポニーテールに束ねた、スレンダーなメガネ女子がいた。 〈〈〈〈〈 おめでとうございます! 〉〉〉〉〉 「あなたがこの世界の1,000,000,000,000,000,000人目の来訪者です!!」  俺は突然のことで驚いて口が開いたままだ。 「あ、あの~ここはどこですか?」 「ここは現世とあの世の狭間(はざま)ですね。私は異世界『エニワン』を管理している女神ゼクシーです」 「異世界ですか?どうして俺はここにいるのでしょうか?」 「あら?覚えてないの。あなたは死んだのよ」 「えっ、俺が死んだ?」 「そう、死なないとここには来れないのよ」 「どうして死んだのでしょうか?名前すら思い出せなくて」 「分かったわ、調べてあげるわね」  そう言うと女神ゼクシーは目の前のパソコンに何やら入力を始めた。  カチ、カチ、カチ、カチ、カチ 「は~い。お待たせ~!あなたの名前は本郷 (たけし)君、死亡年齢17歳ね」 「本郷 武ですか、死因はわかりましたか」 「死因ね。ちょっと待ってね」  カチ、カチ、カチ、カチ、カチ 『死因は悪性の癌ね。小さい頃から癌が発症し、入退院を繰り返し成長した。そして亡くなる数か月前から意識が無くなり植物状態に…これなら死んだことなんて分からないわ。それにほとんど寝たきりだったから、家族の記憶もないわ。可愛そうに』 「なにか分かりましたか?」 「ざ、残念ながら死因までは管理してないから分からなかったわ。ごめんね~」  さすがに可哀そうで言えない。 「これから俺はどうなるのでしょうか?天国とか地獄行きでしょうか?」 「そうね」  カチ、カチ、カチ、カチ、カチ  女神ゼクシーは、そう言うと再びパソコンを叩きだす。 『まあ、この子ったら運のポイントが320も残ってるわ。病気だったから使う事もなかったのね。そうだわ』 「ねえ、もう一度、人生をやり直してみない?私の世界『エニワン』で」 「え、生まれ変われるのですか?」 「転生は無理ね。手続きが面倒だし、承認が降りるのに時間が掛かるわ」 「では、どうなるのでしょうか?」 「転移しましょう。転移なら私の自己判断ですぐにでもできるから」 「転生と転移の違いは何でしょうか」 「転生はその世界の誰かに生まれ変わるの、転移は他の世界に移る事よ」 「では、それでお願いします」 「わかったわ。何か要望はある?」 「要望ですか?」 「そうよ、向こうの世界に行くにあたって、こんなだったらいいな、とか」 「そうですね、では病気をせず怪我をしない丈夫な体をお願いします」 「丈夫な体ね。どうしてなの?」 「な、なんとなくです」 「なんとなくね(無意識にかしら)。あと転移3点セットを付けておくわね」 「転移3点セットですか?」 「えぇ、転移の定番と言えば、鑑定・異世界言語・ストレージの3点セットよ。まだなにかある?」 「そうですね、行ってみないと分かりませんが。自分を守れる、いいえ自分を含め誰か4人は守れる強さをください」 「どう言う事かしら」 「知らない世界では何があるか分かりません。だから身を守るすべと、いずれ家族や守りたい人が出来た時に、その人達も守れる力が欲しいのです」 「いいわ。それも付けてあげる」 「はい、ありがとうございます」 「それから『エニワン』用の名前を私が付けてあげましょうか?後、お母さんとか呼んでも良いわよ」 「あっ、いえ、本郷 武では通じないのでしょうか?」 「い、いえ、そんなことは無いわ。過去に呼び出された勇者も黒髪で日本人の名前だったから、子孫は今でもその名を引き継いでいるわよ」 「では、このままでお願いします」  チッ! 「色々、ありがとうございました」 「では、元気に行ってらっしゃい。は~い1名様ご案~内~!!次の方どうぞ~!」  あっ、そうだ。  良いことを思い付いたわ。  ちょっといい男にして、と。  来訪者1,000,000,000,000,000,000人記念の特典もあげちゃおう!
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