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「父さんも母さんも美優のことを気に入ったみたいだし、第一に俺がいるんだから絶対に大丈夫だって」
「はい。そこは安心しています。椎葉さんにはなにからなにまで頼ってしまって。本当にありがとうございます」
「急に改まっちゃって。どうしたの?」
「わたしの母のことです」
「俺はなにもしてないよ。そりゃあ親子なんだし、なんだかんだいっても、美優のお母さんは美優のことを心配しているんだよ。それは俺も話してみてなんとなく感じた」
それまで友達すら家に連れてきたことがなかった美優がいきなり交際相手を連れてきたものだから、美優の母の驚きようは相当なものだった。
だが椎葉の真剣な気持ちを聞き、母は「娘をよろしくお願いします」と深々と頭をさげた。頭をあげたとき、その目は涙ぐんでいて、そのときになって美優はようやく母の愛情を感じることができた。
その後、椎葉の実家の話を聞き、母はプチパニックに陥っていたが、椎葉がなだめ、その場は無事におさまったのだった。
「わたしもこれからいろいろと勉強していきますので、どうぞご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
「こちらこそ。俺も美優に料理を習いたいな」
「椎葉さんがお料理?」
「やっぱり自分でキッチン用品を使ってみないことにははじまらないしね。それに何度か料理に挑戦してみて、けっこう楽しかったから。こんなふうに思えたのは美優のおかげ」
そのセリフに美優はドキリとした。
椎葉からたくさんの影響を受けていることを感じていたが、自分の存在も誰かに影響を与えていることを知り、不思議な気持ちだった。
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