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3  リクルーターはめぼしい人材に声をかけるという。 「今度、飯でも食いにいこうよ」  と声をかけられたときにはラッキー、と宗春は内心小躍りした。    それ以後、山本との関係づくりに細心の注意を払った。誘われればあらゆる予定をキャンセルして会いに行ったし、常に先輩として立てた、と思う。二次選考のグループディスカッション対策から、当日着ていく服装まで相談した。  アドバイスにはすべて従った。疑問などさし挟んで生意気なヤツと思われたくなかった。機嫌を損ねてネガティブな報告をあげられては困るからだ。    二次選考では三度にわたるグループディスカッションを潜り抜けた。あとは役員との面接と就職前健康診断の結果を待つばかりであった。面接は終始友好的だったし、身体は文句なしに健康だ。  どうしてなんだろう。何がいけなかったんだろう。  何度もパソコン上の文字を読み返しているうちに、ふとリクルーターの山本との会話を思い出した。 「先輩、二次選考残りました。ありがとうございます、ほんとうにありがとうございます。あとは最終選考だけです。一日も早く先輩と一緒に仕事をさせていただきたいです」  ことさらに嬉しそうな声をはりあげて報告の礼を述べた。 「おめでとう」  妙に落ち着いた山本の声。 「あの、わたくし何か不手際がございましたでしょうか」 「いや、そういうわけじゃないよ。うん、おめでとう。最終も頑張ってね」  なんとも煮え切らない山本の声であった。  あのとき、既に結果がわかっていたのかもしれない。疑問が宗春の中で大きく膨らんでいく。  宗春は山本に電話をかけた。
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