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「じゃあ仕事があるから」
山本は電話を切ると、総務部長のもとへ行った。
「申し訳ございません。電話対応をしておりまして少々遅れました」
「就活生か?」
「はい。小山田くんです」
「ああ、彼ね。成績もエントリーシートの内容も文句なしだったんだけどもねえ」
「はい。同門の後輩ですので僕も残念です」
「でも仕方ないよね。無いんだから」
「仕方ありません。本人のあずかり知らないことですから気の毒ではありますが」
「最近は少ないからねえ。みんな育ってくるうちになくなっちゃうんだよねえ。はい、これ」
部長は自分の横にある可動式キャビネットをぐいと山本のほうへ押した。
キャビネットには緑色の大きな封筒が山のように積まれている。
「胸部レントゲンのフィルム。いつもどおり極秘扱いで処分して」
「かしこまりました」
山本はキャビネットを推して廊下に出ていった。
総合商社播商株式会社の採用には秘密があった。
採用前健康診断で必須となっている胸部レントゲンに、或る骨が写っていることが最重要の採用条件なのである。
その骨の名を反骨という。
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