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走っている。
ただひたすらに走っている。
たった一人で。
(どうせ三日坊主になるよ)
それだけは絶対にならない。そう決めて始めた。
始めてから今日で一週間。
(雨が降ったら今日だけはお休みってして、そこからやらない習慣がついて、それからはやらない理由を探すようになるよ。)
雨の日もやめなかったぞ。
まだ続けてるぞ。
どーだ。
どーだ。
何のためにこんなことしてる?
そんなことは決まっている。
強くなるためだ。
(ただ走ってるだけじゃん。そんなことで本当に強くなれると思ってるの?)
そんなことはわかってる。でも、他にできることがない。
技術的な練習はしてる。練習メニューはしっかりこなしてる。
真面目に。
そう、真面目に。
それだけ・・・。
今年入って来た一年生の中には既に自分より強い子がいる。
このままじゃ、試合に出れなくなる。
(弱いくせに。先に生まれたってだけで先輩面するの?)
わかってる!だから!
体力がつくのは悪いことじゃない。
体力があれば練習もずっと集中してできるはず。
少しでも、ほんの少しでも、何かできることをやらないと。
(そんなことして何になるの?才能無いんだから時間のムダじゃない?さっさと諦めて勉強した方が将来のためになるよ。部活でちょっと強くなったってなんの意味もないし。)
意味とかじゃない。
(下手くそが必死になって普通になっても、そんなこと全然凄くないよ?初めからできる人が偉いんだから。)
偉いとか凄いとかじゃない。褒められたくてやってるんじゃない。
(皆に迷惑だよ。下手くそが出しゃばったって邪魔なだけ。それよりサポートに徹したほうが皆の役に立つよ。喜んでもらえるよ。)
うるさい。
うるさい!
うるさいっ!!
(頑張ったし十分偉いよ。人には向き不向きがあるし、それも個性。勝てないことは初めから興味がなかったことにしよう?できないことは本気でやってないことにしよう?)
そんなの逃げだ。
耳障りがいいだけの、ただの敗北宣言じゃないか。
(自分らしくいこうよ。)
自分は負け犬だって、それが自分らしいって自分で認めるなんて、絶対に嫌だ。
(こんなことツライだけだし、全然楽しくないし、こんなことがやりたいことなの?)
やりたいことのために、やりたくないことを全力でやるんだ。
(どうせ上手くも強くもならないよ。どうせ勝てないよ。)
心は低い方に流れるんだ。
一度流れ落ちてしまったら、もう自分だけの力じゃ戻れなくなる。
気持ちが折れたら、もう終わりなんだ。
(言われたことはちゃんとこなしてるんだから誰も文句は言ってないじゃん。今のままでも皆は友達でいてくれるよ。部の人以外にもクラスにも友達はいるんだから大丈夫だよ。)
友達じゃダメなんだ!利害関係にないから一緒にいられるような、そんなヌルい関係になりたいわけじゃない。実力に差がついたら、もう仲間じゃいられなくなる。
本気の話ができなくなる。
対等な関係じゃなくなる。
・・・私は、今どんな顔してるんだろう。
(そもそも、なんでこんなことやってるの?必死になってまで。)
(どうしてだろう。楽しいから始めたことだったのに。続けていると楽しいだけじゃなくなって。)
(弱者に人権なし、そんな言葉が浮かんでくるようになって。)
(なんで、こんなに頑張りたいんだっけ?)
駄目だ。考えないようにしよう。
嫌なことばっかり考えちゃう。
考えちゃ駄目だ。
(才能がないのに思考を停止させて結果が出ると思ってるの?)
わからない。それでも私は何かをせずにはいられなかった。
これは努力に逃げているだけなのだと、そう理解しながら。
それでも、私は走り出す。
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