偽り芝居

4/8
前へ
/8ページ
次へ
 だから、カフェラテは奢る気でいるし、もう一度話して子供の交換は終わりにする気だ。  ちゃんと、話そう。  「なあ、いつか」 「何?」 「もう終わろう。ちゃんと話して、交換なんて、止めにしようよ。」 「あ…良いの?」 「当然だろ。」 「っ…!ありがとう!」  心の底からの笑顔。そんな綺麗なものを見せられる。普段大人しい彼女にしては珍しいものだ。  俺は追加のカフェラテのお金を払い、一緒にカフェを出る。結構時間は経っていたらしく、もう夕暮れが来る。  いつかも驚きを隠せずにいたみたいだ。  「変な感じだよね。夏はまだ暑くて、日も暮れないのにさ、まだ明るいなって言って。冬は寒くてすぐに暮れるのに、もう暮れるの?って。ずっと馴れないな。」 「そんなもんだろ。気付けば暗いか、気付いたときもまだ明るいか、どっちかしかないんだし。」 「そだね。」  当たり前のようなことを話す。  「じゃあ今日今のお母さん達と話して、明日、皆で話そう。で、これで終わりにしよう。」 「ああ、交換なんて、終わろう。」  俺達は約束を交わす。  T字路で別れると、俺は今の自宅へ歩く。  優しくて、別人のお母さんのもとへ、今日だけ帰る。  「あ」  と、あの茶髪の女の子の姿を見つけた。  思わず立ち止まってしまったが、前の女の子は気付いてはいなさそうだ。  俺は知っていても、彼女は知るかはわからない。いつかの友達だから一方的に面識がある、それくらいだ。  俺は立ち止まった足を再び動かして、自宅へと急ぐ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加