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フェニックスは灰の中より蘇る
国会議員の男があった。名前は「火鳥(ひどり)」彼は衆議院の当選回数10回を超えるベテラン議員。祖父の代から続く政治家一家の当代である。「政の王子様」と渾名されるほどの甘いマスクを持ち、国民の人気は高い。
しかし、選挙を前にして同期当選の現役大臣がカネの問題で不祥事を起こし、続いてドミノ式にベテラン議員、新人議員までもがカネの問題で不祥事を起こし与党の支持率は急降下。国会は連日不祥事の追求の場と変わり、場を空転させるに至っていた。予算委員会にも関わらず「予算」の「よ」の一文字も語られることもない。
そんないい歳をした大人が行う嘘と欺瞞を汚言と罵詈雑言で覆うだけの国会議員に対する国民の信頼は地の底にまで落ちていた。
それにも関わらず衆議院は奇跡的に満期を迎えた。通常であれば「◯◯解散」などと、さも理由や大義があるような名前が付けられるのだが、普通に四年の満期を迎えたために穏やかな解散となった。あえて名前を付けるなら「流れ解散」だろう。
衆議院議員…… いや、今や(元)衆議院議員達は各々自分の選挙区へと帰り、選挙戦へと漕ぎ出していくのであった。
火鳥は地元選挙区へと帰り、選挙戦へと入る。火鳥は当選10回を超えるベテラン議員、選挙のことは裏の裏まで知り尽くしており、選挙活動に心配はない。祖父と父から受け継いだ地盤もあり、地元民が選挙において火鳥の名を書くことは最早概念。野党とも密約を交わし、知名度が高い落下傘候補のような刺客を出されることはない。対立候補は何の後ろ盾もない売名目的の泡沫候補か、供託金を出すのが精一杯な志だけは立派な無名候補だけ。火鳥は開票日の20時まで何もせずに寝ていても選挙戦の勝利が約束されているも同然。
そのような訳で、火鳥は全国各地の接戦になるであろう候補者の応援演説に行くつもりであった。
与党の選挙対策部は接戦となりそうな選挙区の候補者に助けを出すために知名度の高い議員を応援演説に出すつもりだった。火鳥も「政の王子様」と称されている自らの知名度を活かし、各地の候補者の応援演説へと駆り出されるのであった。
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