1人が本棚に入れています
本棚に追加
酒に酔っているのか、この爺さん。火鳥は一度命命に対して呆れた。呆れと疑いの目を向けていると、一度命命は急に顔をキリリとさせた。
「そなたら人は一度、奇跡を見せないと信用してくれんのう。よし、絶滅したものを復活させてやろう。リョコウバトたるものを復活させてやろう。今度は食い尽くすでないぞ?」
その時、火鳥の足元に鳩が飛んできた。胸が橙色で首は緑、公園にいるドバトとは明らかに模様が違っていた。火鳥はそれが数年前の海外外遊の際に博物館で見たリョコウバトの剥製の模様と同じであることに気がついた。リョコウバトは20世紀の初頭に狩り尽くされて絶滅した鳩。何故にこんな鳩が日本にと驚くばかりである。
「どうじゃ? 我の奇跡は本物であろう?」
火鳥は困惑するばかりで言葉を失った。一度命命はふぅと溜息を吐きながらスッと消えていった。そして、こう言い残した。
「よいか? 復活させて欲しいものがあったら、心の中で念じるがよいぞ。さすればただちに復活させてやろう。何でもよいぞ? そうそう、前に願いを叶えてやった者は自分の復活に使いおった。世界最高齢で有名な男じゃ、寿命も倍になったそうな。いつでも願うが良いぞ」
火鳥は一度命命を呼び止めようとした。しかし、その刹那…… モノトーンだった世界は元のフルカラーの世界に戻っていく。すると、政策秘書が火鳥の肩を叩いた。
「もう時間ですよ。次の応援演説に行きますよ」
「あ、ああ……」
私は白昼夢を見ていたと言うのか。火鳥は選挙が終わったら病院での静養を真剣に考えてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!