フェニックスは灰の中より蘇る

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「神よ! どうか私を復活当選させてくれたまえ!」 すると、火鳥は光り輝く天使の梯子に照らされた。どこからともなく一度命命(ひとたびのいのちのみこと)の声が聞こえてくる。 〈その願い、叶えたり〉 火鳥は再びテレビに目を移した。しかし、当確のマークは天野一矢についたまま。あれは夢でリョコウバトの件も偶然だったのかと絶望した瞬間、与党の比例名簿に画面が変わる。 すると、アナウンサーが読み上げた。 〈火鳥氏ですが…… 小選挙区で小説家の天野一矢さんに敗れるも、比例代表にて復活当選を果たしております〉 「それは分かりました。それで比例代表の方は…… 万が一のことを考えて比例代表の名簿の上位に先生の名前を入れておいた方が良いのでは」 「私が比例の名簿に名を入れるだと? 笑わせるでない。小選挙区一本で40年以上当選しておるのだ! そんな私が比例復活なぞしてみろ! ゾンビ当選などと言われて笑い者だ! 二度と天下の往来を歩けなくなるわ!」  私は比例代表の名簿に自分の名なぞ入れていない。どういうことなのだ! 火鳥は政策秘書に尋ねたのだが「え? 先生が幹事長に直接頼んだのでは?」と、覚えのない話をされ、話の要領を得ない。どうやら、一度命命(ひとたびのいのちのみこと)は「比例名簿に名前を入れていた」と言う世界に改変してくれていたようだ…… 火鳥は心の底から一度命命(ひとたびのいのちのみこと)に感謝をするのであった……  さて、これからは国会議員として初当選の時のような無私(むし)の志を持ち、国民のために…… なんてことはない。後は国会議員としての特権を活用して贅沢する生活を続けるだけだ。柔らかい椅子で居眠りするだけで年収2000万円はさすがにやめられない。これだから国会議員はやめられない。 初当選の無私(むし)の志はどこへやら、火鳥はいつの間にか当選だけが目的の税金泥棒と化し、その役目を息子や孫に引き継ごうと考える俗物へと成り下がっていた。
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