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第一発見者は妻の西園寺洋子――。
利勝が次回作の脚本の直しをするというので隣の部屋で就寝していたところ、書斎から聞こえた二発の銃声に目を覚まし、慌てて廊下へ飛び出した。
その際、逃げ去っていく人影を目撃している。
全身をすっぽり覆う黒いフードつきのコートを着用し、男女の別は分からないという。
その後、洋子は利勝の部屋に入り、暖炉の前で拳銃を握りしめたまま事切れている夫を発見した。
第二発見者は娘の遥香――。
彼女も別室で就寝していたが、銃声に飛び起き、洋子の悲鳴を聞きつけて急行したという。
その後は使用人たちが次々に部屋に駆け込んできて大騒ぎとなった。
警察に一報が入ったのもその頃だ。
梅子の個人秘書である樽見順子からの通報だった。
樽見は通報後、梅子の部屋へ駆けつけ、事情を説明して梅子を二階へ連れてきた。
その間、約十分。
しばらくして西園寺明美夫妻がやって来て、遅れて西園寺孝雄も到着した。
その後、相前後して迎賓館のゲストたちが大挙してぞろぞろと部屋に入ってきたという流れだ。
詩織ももちろんアリバイを訊かれたが、
「ゲストルームで寝ていたら銃声のようなものが聞こえてきて、あわてて外へ飛び出しました」
と、他の来賓とほぼ同様の証言をした。
アトリエで涼介と過ごしていた事実を言うわけにはいかない。
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