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詩織が自由を謳歌できるのは、西園寺遥香と一緒の時だけだ。
この時ばかりは隼人も頻繁に連絡を寄越して監視するような真似はしない。
遥香もそのあたりをちゃんと心得ていて、定期的に詩織を誘い出してくれる。
別邸で開かれるパーティーは絶好の口実なのだ。
「俺も行っちゃまずいのかな」
未練がましい顔つきで、隼人が訊いてきた。西園寺家のパーティーに隼人が招かれたことはこれまで一度もない。
「言ったでしょ。おばあ様が来賓の選定にはことのほかうるさいの」
「パチンコ屋のせがれじゃ、場にふさわしくないってことか」
「そういうわけじゃないけど……」
「ふん、お高くとまりやがって。金ならこっちだって腐るほど持ってるぞ」
隼人は西園寺家に対して強いコンプレックスを抱いている。
詩織は唯一息抜きのできる時間を、隼人に邪魔されたくなかった。貴重な機会を有効に活用し、自分自身を解放するのだ。
月に一度のこの娯楽があるからこそ、辛い束縛生活にも耐えられる。
しかし最近の詩織は、隼人による束縛への反動からか、時として羽目を外しすぎてしまうきらいがあった。
彼女自身、自分の内側に潜む奔放な一面に戸惑い、恐れを抱き始めていた。
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