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奥多摩迎賓館
奥多摩町は、東京都とは思えないほどに雄大な自然がどこまでも広がっている。
奥多摩三山(大岳山、御前山、三頭山)をはじめとする山々の尾根が連なり、その狭間を透き通るような多摩川の清流が流れている。
温泉や鍾乳洞、キャンプ場など観光資源も豊富で、トレッキングや渓流下りなどのアウトドアレジャーを楽しむ人々が季節を問わず訪れる。
その南部に位置する小さな湖――鶴見湖――のほとりに、巨大な西洋式宮殿が建造されたのは六年前のことだ。
豪華絢爛たる外観で、近隣の人々は畏敬を込めて奥多摩迎賓館と呼ぶ。
毎週末、一千万円はくだらない高級車が駐車スペースを埋め尽くし、着飾った人々が吸い込まれるように建物の中に入っていく。
一階には、真紅の絨毯が敷き詰められた大ホールがあり、見上げると巨大天井画と煌びやかなシャンデリアが圧倒的な存在感で迫ってくる。
七本あるコリント式大円柱には、イタリア産の高級大理石ブレッシュ・ビオレットが使われ、その荘厳さは本家の赤坂離宮と比べても何ら遜色はない。
二階と三階はゲストルームになっており、まさに奥多摩の迎賓館である。
詩織が到着した時には、すでに五十名ほどの来賓が揃っており、ワインやシャンパンを片手に和やかな談笑を交わしていた。
にわかセレブの詩織は、このような場にいまだ気後れを感じるところがある。資産家夫人となり、他の列席者と比べても見劣りしない服装や装飾品を身に纏ってはいても、所詮売れない脇役女優に過ぎなかったという劣等感がぬぐい去れない。
助けを求めるように西園寺遥香の姿を探していると、
「詩織」
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