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「自分たちこそ出頭したらどうなんだ」
「なんですって」
明美は顔を真っ赤に染めた。
「どういう意味よ」
「自分の胸に聞いてみるんだな」
「私たちが真犯人だとでも言いたいわけ」
「利勝を殺す動機があるのはお袋ではなく、お前たちだ」
「やめなさい!」
梅子の激しい叱責が飛んだ。
「身内で言い争っている場合ではありません。今はいかにして西園寺の家名を守るかを最優先に考えるべきです。後継者である利勝をあのような形で失い、さらに身内から逮捕者を出せば、西園寺コーポレーションがこうむる損害は計り知れません」
「だから洋子と涼介をあの時、西園寺家から叩き出せばよかったんですよ。そうすれば、こんな事態にはならなかった」
孝雄が非難するように言った。
「洋子は遥香の母親ですよ。次期CEOの母親なのです」
「それも考え直すべきですね」
「孝雄の言うとおりよ」
明美はここぞとばかり弟に加勢する。
「もしも洋子さんが連続殺人事件の犯人なら、そんな人の娘を西園寺グループの総帥に担ぐわけにはいきませんよ、お母様」
「おかあさんは利勝が亡くなって以来、すっかりおかしくなってしまわれた。正常な判断力を失っておられます」
「お、お前たちは、何ということを……」
子供たちからの思わぬ反撃に、梅子は眉を吊り上げる。
「実業経験のまったくないわずか三十歳の遥香に、西園寺グループの舵取りができると本気で思っているんですか」
孝雄が迫った。
「譲るのは五年後だ」
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