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「私はCEОだ。筆頭株主でもある」
「三十パーセント強に過ぎません」
「なに」
「取引銀行を含め、他の大株主の方々とはすでに話がついています。皆さん、最近のお母さんの判断力には大いに疑問を抱いておられ、我々の考えに強く賛同していただきました。すでに現時点で五十二パーセントの株式を押さえてあります」
「まさか」
その目に初めて狼狽が現れた。
「次の株主総会でお母さん、あなたはその地位を追われることになります」
梅子は一瞬、顔を白くした。
が、すぐに強気の姿勢を取り戻す。
「そう簡単にはいかないよ。私を甘くみちゃいけない」
「いずれにせよ、今後は弁護士同士の話し合いに委ねましょう」
「明美。お前も孝雄と同じ考えかい?」
ぎろりと長女を見据える。
明美は梅子の迫力に気圧されながらも、勇気を振り絞るようにして言葉を発する。
「私は夫の雅俊とともに懸命に仕事に取り組み、今日まで会社を発展させてきました。――なのにお母様は、私たちのことは一顧だにせず、利勝のことばかりを可愛がり、評価してきた」
「だから親を裏切るっていうのかい。九十歳にもなる親から、命よりも大切な会社を取り上げようっていうのかい」
「最初に裏切ったのはお母様のほうでしょう」
「なに」
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