112人が本棚に入れています
本棚に追加
「私たちのプライドをずたずたに切り裂いた。大して業績を上げたわけでもない利勝を褒めちぎって、さも私たちが無能のように言いふらした。彼のネット事業も映画製作の収益もたかが知れています。財務諸表を見れば、どちらの会社がより成長し、より利益を上げているかは明らかです。なのにお母様は、利勝、利勝、と次男ばかりを可愛がった――。いいですか、お母様。私たちはあなたの単なる駒ではありません。今後いっさい、あなたの指示には従いません!」
渾身の一撃だった。
言葉の石つぶては、正確に梅子の急所を捉えた。
それは娘から母親に向けられた最後通告であり、絶縁宣言でもあった。
梅子は全身をぶるぶると痙攣させながら明美を睨み上げる。
「いいだろう。お前たちがそこまで言うなら、本当のことを教えてやろう」
顔に残忍な笑みが刻まれた。
「言っておくけど、これはお前たちが言わせたんだからね。私は言いたくなかったのに……墓場まで持っていくつもりだったのに……孝雄、明美、お前たちが無理矢理私に言わせるんだからね」
その顔には憤怒と悲哀がないまぜになったような、一種異様な妖気があらわれる。
まるで夜叉だ。
孝雄と明美は顔をこわばらせる。
何が語られるのかと怯えているのが見て取れる。
梅子は満身の怒りを叩きつけるように言葉を発した。
「お前たち二人は……私がお腹を痛めて産んだ子供じゃないよ」
「……」
姉弟は顔を見合わせる。
梅子の目にじんわり涙が溜まっていく。
「お前たちと私は、血がつながっていないのさ」
言ってしまってから、唇を噛んだ。
孝雄と明美はあんぐりと口を開ける。
最初のコメントを投稿しよう!