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「こんなものは出鱈目よ、遥香は間違いなくあなたの子です」
すると夫はもう一枚の紙を差し出してきた。医療機関名義の書類で、検査データの数値が並んでいる。
それによると、利勝は非閉塞性無精子症であり、精巣精子採取術という特別な手術を施さない限り、女性を妊娠させる能力は皆無だという。
「いったい、遥香は誰の子なんだ」
利勝は火のような怒りを炸裂させた。
洋子を激しく問い詰める。
長年裏切られてきたことへの憤怒が全身に燃えたぎっていた。
しかし、洋子は頑として口を割らなかった。
自分は不倫など一切していない。検査結果が間違っている。もう一度、きちんと調べてほしい。顔色ひとつ変えずに言い張った。
パーティー終了後にもう一度話し合おうということになり、互いにわだかまりを抱えたまま後継披露パーティーに臨んだ。
その場は二人とも笑顔で協力して乗り切った。
洋子はこの段階ですでに利勝を殺害する腹を固めていた。
現在の生活を維持し、西園寺家の一員としての地位を失わないためには、利勝に死んでもらうほかなかった。
自分のことはともかく、遥香や涼介に西園寺家の財産を継承させるためには避けて通れない。
パーティーを途中で抜け出すと、敷地内の防犯カメラのケーブルをすべて切断し、その時に備えた。
はたして深夜の話し合いは物別れに終わり、利勝は怒りに任せて洋子を殴打することさえした。
「男にとってこれほどの屈辱はない」
「当然離婚になる。覚悟しておけ」
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