13人が本棚に入れています
本棚に追加
大地がひととおりのアドバイスを終えると、随分と時間が経っていた。周囲の人影はまばらになり、広いフロアのあちこちで照明が落とされている。
「ありがとうございます~。時間取ってすみません。梯さんはもう帰られますか?」
「いや、もう少しやっていくよ」
特に急ぎではなかったが、中断した仕事だけは済ませておきたかった。
「じゃあ、お礼にコーヒー買ってきますね」
「ありがとう。けど、自分で淹れるからいいよ」
礼を言って大地が給湯室に向かうと、河瀬もひょこひょことついてきた。大地はいつも自分で淹れるが、河瀬は一階のコーヒーショップのものを飲んでいる。
「インスタントでよけでば飲む?」
「いいんですか」
河瀬が待ってましたとばかりに破顔する。
「お礼どころかご馳走になってすみません」
「砂糖とミルクは?」
「あ、ブラックでいいです」
「了解」
自分のカップに牛乳を注いでレンジにかけると、その間に紙コップを出して河瀬の分を淹れる。
「なんか手際がいいですね」
「そう? まあひとり暮らしが長いし」
「自炊してるんですか?」
「特別凝ったものは作らないけどね」
最初のコメントを投稿しよう!