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変な意味じゃありませんとへこへこと頭をかきながら、椅子を戻して深呼吸を繰り返している。
「俺のボキャが足りないんです。度量とか器量とか、なんかそういうもろもろもっ」
ぶつぶつとつぶやいた河瀬は「わーっ」と机に突っ伏した。大地はやれやれと笑いを漏らし、カフェオレを味わうことにする。
師走に届いたパドマからの荷物には、レーの手紙やナムギャルの絵が入っていた。大学ノートを切り取ったものに書かれているのを見て、便箋すら手に入らないあの村を思う。
電気もまともに通らず自然のほかにはなにもない。それでも決して貧しくはない真心あふれる桃源郷。
だが、遠い。わかっていたはずなのに、あまりにも遠すぎる……。
レーの手紙には丁寧な文字で日常のひとこまが書かれていた。長い冬がやってきたことやナムギャルが転んで怪我をしたこと。大地のコーヒーを皆で飲んで、ドルマが渋い顔をしていたこと。でも夜にはひとり大地を想って飲んでいます、と。
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