12人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
似てると思ったんだ。
中学の時の彼女を思い出す。
走ると彼女をどうしても思い出してしまう。
走る、タイムを測る。息を整える。
この動作は、苦ではない。
姉にならないといけないと思って始めたことだが。
初めてみると案外楽しいものなんだな。
「川畑さん、タイム早くなったね。」
走り終わると、顧問の先生が私に伝えた。
「よかった、です。」
走り終わり、息が切れる。
「前よりも、0.1秒も縮んでる。凄いわ。」
顧問の先生が、私に笑いかける。
タイムが0.1縮むことは、本当に大変だと陸上をしている人なら分かるだろう。
でも、人間なんて過程を見ていない人が多い。それは陸上だけの話ではなく、人生として、生きていると特に感じる部分だろう。
結局、私たちは結果を見てその人が優秀かどうかを見ているのだ。
仕事でも、「毎日真面目に規定の仕事をする人」より「ちょっと嘘をついてでも器用に仕事できる人」の方が職場でも重宝すると思ってる。特に効率だとか団体行動が好きな日本は好きだから。
息を整える。ゆっくりとスピードを落としながら笑顔を作っていく。
「大会で…この数字を出せるようにします。」
そういうと先生は笑顔で
「そうね、期待しているわ。」
といった。
先生が一番欲しいであろう言葉を言う。
大人はいつだって勝手に期待してるんだよ。
期待して勝手に落ち込んで、私たち本人の気持ちとかその時の努力なんて見てもいない。いや、見たつもりになっているだけなんだろう。
そんな大人になるのは一体いつなのか。
空がだんだん、青から茜色に変わる。
真由の色が減っていく。
明日の私は今日の私より大人になっていくのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!