生きている難しさ

10/10
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
似てると思ったんだ。  中学の時の彼女を思い出す。    走ると彼女をどうしても思い出してしまう。    走る、タイムを測る。息を整える。  この動作は、苦ではない。  姉にならないといけないと思って始めたことだが。  初めてみると案外楽しいものなんだな。    「川畑さん、タイム早くなったね。」  走り終わると、顧問の先生が私に伝えた。 「よかった、です。」  走り終わり、息が切れる。 「前よりも、0.1秒も縮んでる。凄いわ。」  顧問の先生が、私に笑いかける。  タイムが0.1縮むことは、本当に大変だと陸上をしている人なら分かるだろう。  でも、人間なんて過程を見ていない人が多い。それは陸上だけの話ではなく、人生として、生きていると特に感じる部分だろう。  結局、私たちは結果を見てその人が優秀かどうかを見ているのだ。  仕事でも、「毎日真面目に規定の仕事をする人」より「ちょっと嘘をついてでも器用に仕事できる人」の方が職場でも重宝すると思ってる。特に効率だとか団体行動が好きな日本は好きだから。    息を整える。ゆっくりとスピードを落としながら笑顔を作っていく。 「大会で…この数字を出せるようにします。」  そういうと先生は笑顔で 「そうね、期待しているわ。」  といった。  先生が一番欲しいであろう言葉を言う。  大人はいつだって勝手に期待してるんだよ。  期待して勝手に落ち込んで、私たち本人の気持ちとかその時の努力なんて見てもいない。いや、見たつもりになっているだけなんだろう。  そんな大人になるのは一体いつなのか。  空がだんだん、青から茜色に変わる。  真由の色が減っていく。  明日の私は今日の私より大人になっていくのだろう。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!