私はあの子になりたかた

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  「何度言ったらわかる。また髪の毛を青色に染めて。しかも遅刻まで。」  彼女は舌打ちをしながら、話を聞いている。 「だから、髪の毛は私の勝手ですよね。先生だって、白髪染めしてるじゃないですか。担任だからって、なんでそこまで注意されないといけないんですか?」 「見た目を整えるのと、自分勝手な行動は違うだろ!」 「違うんですか?自分勝手な行動って。私が先生に何の迷惑かけてるんですか?」  真由も、先生も負けじと話す。  これはまずい。  周りの人も、真由の方を向きながら、コソコソ話し出した。 「先生にわざわざ歯向かう必要ある?」 「かまって欲しいだけでしょ。家庭が問題あるんだよ。ああいうのは。」  違う。そうじゃないの。 「かなで、ごめんね。先に行っててくれる?」 「ええ。あの暴論女のところに行くの!?」  暴論女…。みんな彼女を誤解している。  ただ、彼女は自分を持っているだなのだ。周りが踏み出せない部分に、臆せず進める才能。  かなでに、科学の教材を押し付け、先生のところに向かう。   「先生こんにちは。真由さんがどうされましたか?」  ふんわり。自然な笑顔。  真由と先生の間に入るように、話を聞く。  周りの空気も、雰囲気も落ち着いた。 「川畑。学級委員だからって関係ないんだ。俺は今、春井と話してるんだ。」 「いえ、学級委員だからです。クラスメイトのことをわかっておきたい。それに、こんな人が集まる場所で大きな声でお話ししていたら、休憩時間といってもみんな、びっくりすると思いますよ。」  先生は、まだ険しい顔をしている。 「いや、聞いていたと思うが、髪染めの話だ。遅刻も多い。桜庭高校の一人としての自覚が足りないのだ。」  何だそれ。  一瞬、ふざけているのかと思った。瞼がピクリと動いてしまう。 「なるほど。ですが、桜庭高校の校則に関して髪染めについては触れられておりません。また、遅刻のことに関しては彼女自身の体調にもよりますので、人前でご指導をされるのを控えていただけるとありがたいです。」  お願いします。と頭を下げる。  周りの人も、だいぶ反応が変わった。 「確かに、染めることについても何も言われてないもんね。」 「てか、先生にそこまで言えるのすごいよね。私そこまで勇気出ないや。」  流石に先生も居心地が悪かったようで、 「そろそろ、授業が始まるから早く行きなさい。春井、お前も早く準備しろ。」 「はいはい。いわれなくても。」  チャイムがなる。  周りの生徒も、自分たちの教室に戻った様子で、先生も階段を登り上の階に行った。
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