生きている難しさ

1/10
前へ
/25ページ
次へ

生きている難しさ

自由に生きるのはなんでこんなに息苦しいのだろう。  したいことを、やりたいことをすると周りは私を変な目で見る。    中学生の頃だった。  珍しく遅刻せず登校したら、クラスの中心の女子たちが反応を確かめるように笑っていたのだ。  私にじゃない。クラスの端っこの席の女の子にだ。  よく見ると、その子が涙を溜めて立っているのに気づいた。  なんで席につかないんだろう、ホームルーム始まるのに。なんて暢気なことを考えながら自分の席に向かう。  原因はすぐに分かった。    椅子がない。    そこでハッとする。  なんで彼女たちが笑ってたのか。  これは、明らかに間違っている。  私は、自分の席から椅子を持ち上げ彼女の席に持っていった。 「これ、使いな。私今日休むから。」 「え?」  彼女は明らかに動揺していたと思う。小顔でクリっとした目。このクラスで群を抜いてかわいい。  だからだろう。  女子は、自分より特別優秀だったり、自分より明らかに才能があると、足の引っ張り合いをすることが多い。  大方、可愛いから嫌がらせを受けていたのだろう。 「大丈夫だよ。先生に相談するから。」  小声に彼女は言った。 「じゃあ、相談するまで立っとく訳?悪目立ちもいいとこじゃない?まあ、先生に言ったらややこしくなるだけだと思うけど。」  ちらっと、目立つグループに目を向ける。  面白くなさそうな顔をしながら、私を見る。 「で、でも申し訳なくて。」  嫌がらせを受けてる子は、おどおどしながら答えた。 「じゃあ。重たいからここに置いとく。そこからは自分で考えて動いて。」  そういうと、彼女の近くに椅子を置く。半分押しつけにだけど。 「あ、ありがとう。」  さっきより大きな声で、顔を上げながらお礼を言ってくれた。 「どういたしまして。じゃあ、私帰るから。」  自分の席に戻り、リュックを取って廊下に出る。  私の選択は間違っていない。嫌がらせを受けるのは、間違っている。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加