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階段を降りるとき、嫌がらせをしている三人が声をかけてきた。
「ちょっと!」
「何?何か用?私、先生に構われたくないから早く帰りたいんだけど。」
踊り場から、彼女たちを見上げる。
名前もわからない。似たような髪型で似たような顔。
同調圧力は怖いな、と呑気に考えている。
「春井さん、余計なことしないでよ。」
「ええ〜?なんのことかわかりませーん。」
「ふざけた言い方しないで。紗英は、あいつは人の彼氏を奪うような女なんだよ。」
「そうよ、だからちょっと嫌がらせしてるだけなのに」
「あーあ、ゆい。可哀想…。」
息巻いてた女の子、結衣という子は涙をポロポロ流している。
「泣かないで〜!梨花は仲間だから!」
「そらもだよ!大丈夫だよ!」
涙を流してる、結衣を抱きしめるように2人は近づいた。
ため息をつく。
なんの茶番なんだろう。
「結局、何が言いたい訳?私早く帰りたいんだけど。」
腕時計を見る。あと五分ほどでホームルームが始まる予定だ。
彼女たちが私を見て、一人が真っ赤になりながら大声でいう。
「だから邪魔をしないでよ。私の邪魔をしないでよ。これ以上何も取らないでよ!」
目を瞑る。母の声が聞こえる。
毎度考える。恋愛はこうも人を変えてしまうのか。
私が間違っているのだろうか。
目を開く。そこには、母ではなく同い歳の女の子が三人。
深呼吸を一回して、冷静に答える。
「私が何を取ったって言うの。恋愛で拗れて、彼女をいじめて何になるの?その時間を自分磨きやらに使おうと思わない?そりゃ、こんなヒステリックな人より人畜無害な人を好きになるよ。」
皮肉だと思う。でも、やっぱり私は間違っていない。
鐘の音が聞こえる。
一人は泣きながら、もう二人は彼女を慰めながら教室に戻っていった。
先生たちがくる。逃げるように階段から降りる。
見たくない。聞きたくない。そんな情報は、誰かを攻撃することで、責任転嫁できる。
こんなことばっかりだな。世の中。
スカートが捲れるのも気にせず、その日は走って家に帰った。
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