生きている難しさ

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だから学校は嫌なのだ。教師たちは、真面目で表上でもルールを守る子の話しか聞かない。  表上なだけで、裏ではどんなことをされているか見向きもしない。見ないことで、面倒臭いことを気づかないふりをしているのだ。  皆んながではないのは知っている。でも、私の環境は、こんな人ばかりで嫌気がさす。 「いい加減にしろ!嘘をついて、人をいじめて。親御さんにも来てもらうよう電話をかける。俺と話して本当のことを言ったら、反省文だけで済ましたものを。」  ああ。男性の怒鳴り声はいやだ。  父のことを嫌でも思い出すから。  母のことを嫌でも思い出すから。 「呼んでも来ませんよ。お母さん、今日は家に帰ってきませんから。」 「そういうことじゃないだろ!お前、その人を見下した目をやめろ!」 「普通の目なんですが…。私そんなに目つき悪いですか?」 「お前、いい加減に!」  先生が立ち上がり、さらに大きな声を出したときだ。   「失礼します。」    綺麗なガラスの音。  ラムネ瓶のような、綺麗な音の声が聞こえた。 「柴田先生。こんにちは。お話の最中ですが、今よろしいでしょうか?」 「お、おう。なんだ。」  すらりとした手足に、綺麗に整えられた胸元まである髪の毛。夏服には、シワがなく清潔感がある。  なんと言っても美形だ。少し垂れ目な目尻。唇は艶々で、鼻筋もしっかり通っている。そして、顔も小さい。お人形みたいだ。  思わず、魅入ってしまう。    彼女はそんな私の視線も気にせず、笑顔を見せる。 「良かったです。先生に、ご来客が来てました。正面玄関にいらっしゃって声をかけましたら柴田先生にご用事とのことです。お名前が石田さんのご家族様とのことでしたよ。」 「分かった。すぐに行く。いつもありがとうな、川畑。お前みたいな素直な生徒が多ければな。」  先生は私をジロリと睨みながら、ドアの方に向かう。 「いえ、体育の帰りでしたので。気にしないでください。」 「お前は姉に似て、優秀だから助かるよ。」  先生は褒めてたつもりなのだろう。  川畑と言う彼女は、一瞬。本当に一瞬。ため息をついたような、またか…とあきれるような顔をした。  
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