生きている難しさ

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「それじゃあ、俺は行ってくるが、春井。帰るんじゃないぞ。」  そういうと、先生は生徒指導室から出て行った。  彼女は、先生の背中を見て、見えなくなったのを確認して中に入った。 「廊下まで聞こえてたよ。」  にっこり笑った顔で私を見る。  扉を閉め、私の真向かいの席に座る。 「柴田先生も、また話を聞かない人だね。」 「何?私と何が話したいの?別に優等生となすことなんてないよ。」 「別に、優等生だなんて思ってないけどなあ。春井さんはちょっぴり、不器用なんだね。」 「意味がわからない。」 「人を助けるのは色々方法があるよ。ただ、それがちょっと下手なんだよね。気持ちを伝えるのが苦手で。」 「ああ、そうね。あなたと違って下手かもしれない。でも、だからなんなの。説教?」 「そうじゃない、ただ、別の方法もあったよねってこと。」 「うるさいな!」  私は、机の上にあった花瓶を床に叩きつけた。  ガシャっと音を立てて花瓶は割れるが、彼女は、微動だにしない。
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